2024.11.18
バイリンガルに育てる海外在住

海外で育つ子どもの、言語発達


こんちは。
本日はバイリンガルと、言語発達について書いていきます。

結論から申しますと、バイリンガルは、思っている以上に子どもに負担がかかります。

 でも海外だと、別に普通のことじゃん?

その疑問には、後に答えて参ります🤔

負担と言うのは、認知的 そして 心理的 負担です。

海外での本物のバイリンガルを成功させる上で、最も大切なことは
負担がかかっている、ということを理解したうえで、対応することでしょう。

そして、負担がかかる、というのは悪いことではありません。
独自の、アイデンティティを築く、ということです。

ただし、もともと持っているタフネスと、(あるは タフネス か)、配慮の効いた子育てが必要です。

葛藤と戦う強さや、勤勉性と言う資質(幼児期の心的発達の上に、小学校で主に獲得される主要な心性)が欠かせません。

バイリンガルを目指したものの、日本語-英語のリミテッドバイリンガル(どちらの言語も不完全である)になる確率は、7パーセント程度である、と言う報告もあります。

(佐藤郡衛 片岡裕子 編著 アメリがえ育つ日本の子どもたち バイリンガルの光と影 赤石書店2008)

これは、どのような理由で起きているのでしょうか。また避けられるものなのでしょうか。


海外で育てていて、日本語の発達に問題がある、問題が出た。

その理由と考えられる対策について、書いていきます。

今回の記事は、幼児期の発達、というところに焦点を当てています。
実は、バイリンガルで気にすべき言語発達は、15歳くらい~ まで続いており、気にしなくてはならないポイントと言うのは、年齢で大きく違います。

少しづつ、記事にもしてゆくつもりですが、お急ぎの方はどうぞご相談ください。



住んでいればしゃべれるようになるでしょ

 いやいや、海外には普通に何か国語も話す人がいるよ。


まずは、ここから書いていきます。

もちろんです。ただ、日本はかなり 極端に振れる ことの多い文化である、ということや、日本語は語族としても、かなりユニークな言語であることが知られています。


(引用:山本つぐみ 最小限のリスクで最大限の幸福を実現する海外移住 2024)

コミュニケーションは、かなりハイコンテキストです。文脈を読むことが必要で、字義通りではないことが多くあります。
ネガティブフィードバックは、間接的に行われることが多く、直接なものではありません。
(日本語でコメントを受けた時、時折、私は相手が何を言っているかわからなくて、ただ いや~ な感情が入ってきて、いや~ な気持ちになることがあります)
信頼は、タスクより関係ベースで起こり、対立は回避され、合意のもとに決断がされることが重視されます。


同じ語族に属す言語(ゲルマンやラテンなど)では、このバリエーションの揺れはそれぞれの国であるでしょうが、皮肉がウィットになるくらいに、比べることが可能なのだと思います。しかし日本語は、起源から考えても、かなりユニークです。

私自身、「今度〇〇しようよ」と言われて楽しみにしていたら、ずーーっとその機会はなく、社交辞令だったのかな?と思い寂しい気持ちになることがありました。ヨーロッパに住んでいた時は、今度〇〇しよう、と言われると、大体字義どおりでした 笑。

まあ、こころの機微がないと言えばそうかも、あけっぴろげと言えばそうかも、と言う感じですが、文化は言葉に現れます。

全く違った態度やあり方、そしてそれにつながる言語を学んでいるのだという、頭を持ってあげることが、大切だと思います。

子どもは、空気感から呼吸をするように ことば を学んできますが、場面場面で異なる空気の温度や密度の違いをキャッチしている、と言えば良いでしょうか。

ここを器用にやったとしても、後に、どの社会で暮らしているか という問題が入ってきます。社会性は、特に思春期前期(小学校3年生くらいからでしょうか)~ 重要になって来ます。
もちろん、その時点で、そこまで積み上げたものがパンチをもって効いてきます。しかし、ここで問題が現れれば、取り戻すチャンス、とも言えます。



二つの空気感を自分のものにするということ

「全く違ったものを学んでいる」

上に述べたその状態のミックス具合が、ご家庭や状況によって複雑に絡み合い、各々独自の様相となります。

国際結婚で、お父さんとお母さんの言葉が違う場合、2世と言われる人たちの現地での結婚、海外に移住した日本人カップル、赴任で一時的に暮らしている場合、ぱっと考えられるだけでも、色々です。

そしてもう少し詳しく見れば、同じ国際カップルだとして、お父さんとお母さんは仲が良いのか、どちらの国に住んでいるのか、どういう文脈で結婚したのか、どんなことで通常揉めるのか 😄といった、様々な要因が、言語発達と絡みます。

この中には、普通に同じ国の人同士が結婚した家庭に見られることも、もちろん多く含んでいます。どうして、そのお父さんなりお母さんは、国際結婚をするメンタリティを持ったのか、というソモソモところから、それが子どもの文化的・心理的背景にも影響を与えるでしょう。

国際カップルでのお子さんには、バイリンガルを目指す場合、一人一言語(各々が母国語で子どもに話しかける)ということが、原則として知られています。

しかし、2が3になる というポイントを、子どもがどのように超えていくのか、とても興味深いです。
通常、母と子の共生関係、1 は、(当初母と子は、あたかも一人の人間かのような時期を過ごします)、あなた と わたし の、2 関係へと変化して言います。
そして、蜜月のような 二人関係 をベースに、お父さんも巻き込んだ、3 の関係へと変化していきます。
この、3 への変化は、言語発達に大変重要で、象徴機能と大きく関わっていることが分かっています。

その 3 になる時に、父と母が話している言語が違う、というのは、全く違う二つを、自分の中に取り込む作業になります。

お父さんとお母さんが話している状況(自分が客体になる状況)と、主体になる状況(自分が喋る時)で言語が違い、家庭内で社会的な言語使用が参照できないということもあります。

先に述べた タフネス and/or 配慮の効いた子育て があり、これは難なく超える子どもも多いでしょう。

しかし、長い目で見るとおそらく心理的には何らかの葛藤を乗り越えているのではと考えられます。
そして、言語発達には問題がなくとも、後に思春期以降で心理的にカウンセリングが必要になるお子さんとお会いしたことがあります。





幼児期の言語発達のつまずきの理由

今日の本題、幼児期のバイリンガルにおける言語発達、に戻ります。

この、二つの違うものを取り込む過程で、言葉の発達 に遅れや、問題を起こすお子さんがいらっしゃいます。


一つには、他の記事でも書いているように、モノリンガルのお子さんにも見られる言語の遅れと、同じ問題を持っているお子さんがいらっしゃる可能性がある、ということです。

もう一つは、2か国語習得の、普通の子でも起きる混乱が、見られている場合です。英語の中に一部日本語がまじる(By the way, あの~)、日本語の使い方がおかしい(犬がたいそうしている ⇒ 正解は 運動している) 日本語に触れる機会が少ないことによる、文法規則の乱用(しょうがない を しょうがある)などがあります。

さらにもう一つ加えるとすると、心理的な問題です。例えば上に書いたような、家族内での心理的なバランスの問題などっです。家族に、子どもの発達やバイリンガルを、どの程度支える準備があるか、とも言えるでしょう。

どんな環境か、という社会的な問題も大きいと思います。

我が家は日本人家庭でしたが私の子ども達は幸いに、現地の学校で友達やその家族に大変恵まれ、ほぼホームステイ状態でドイツのご家族の家で過ごしていたので、その 家庭 からドイツ語の言語感覚を学び、あっという間に話せるようになっていきました。
しかし、小学校5年生で日本に帰国後、そのドイツ語は消えて行ってしまいました。これは、10歳の壁を、ドイツ語で越えていない、と言うことによるものだと思いますが(これについてはまた別記事で書きます)、私の、ドイツ語を持続させよう という気持ちが薄かったことにもよると思います。
ただ、心理的にはとても良い発達を遂げてくれたので(何よりドイツが楽しかったのだと思います)、それはそれで、彼のこころ として残ったものとして、よかったのかなとは思っています。

いずれにせよ、親が 何を目指しているのか は顕著に バイリンガルにおける言葉の発達 に出ます。そして、繰り返しますが認知的にも(知的な作業として)、心理的にも(アイデンティティの問題につながるような)、かなり負荷のかかる作業であることを、肝に銘じておく必要があると思います。



遊びの重要性

最後に協調したいのは、遊びの重要性 というものです。

どれだけ遊んだか? というのは、青年期以降、成人になってからの発達を大きく左右します。遊び、は、大切です。

ですので、ともすると忙しくなる2言語習得ですが、遊ぶ時間 を確保することは至上命題です。これは、負荷のかかる作業を行っている、こころをリフレッシュさせる意味もあります。

遊び は、意味のない行動です。ただ、意味のないことをする時間が、意味のある行動を多くするには必要です。
瞑想状態であること(夢中になっていること)が、遊び で実現されます。いや、それこそ意味がある状態かもですね。

楽しいということ、それが結局は バイリンガルの言葉の発達における、成功のカギと思われます。

後付けの理由より、思い描くプランより、楽しいは最強です。本物の架け橋、独自のアイデンティティを持つ人、になっていくことを支えます。



リミティッドバイリンガル

始めにも触れましたが、バイリンガルの結果には、3種類があると言われています。


プロフィシェントバイリンガル…どちらの言語も年齢に応じてよくできる

パーシャルバイリンガル…どちらか1つの言葉だけが年齢に応じたレベルかそれ以上によくできるが、もう1つの言葉はそこまでに達していない

リミテッドバイリンガル…どちらの言葉もある程度は理解できるが、年齢に応じた発達をしていない


リミティッドバイリンガルの問題は、どちらの言語でも 思考が出来ない、という点です。

言語は現れてきた表面であり、中身 が育っていることが大切です。そしてその 中身 を育てるものが 言葉 なのです。言葉で人は考え、自分を創り、思考し志向し施行します。その子が持って生まれた能力最大に、思考するための言語を与えることは、とても重要だと思います。

そのためには、書き言葉の習得が、必要不可欠な役割を果たすのですが、これについてはまた別記事に改めたいと思います。

先日、娘が中学校の漢字テストの勉強していましたが、
移行、意向、威光、偉功、偉効 
本当にたくさんの同じ音で違う意味の、違う漢字の言葉があります。くらくらします。

diffident dissident disgruntle destitute dilapidated
英語の、advancedな語彙との違いを、感じていただければと列挙してみました。

日本語は:意味に頼るルートがあるが、一つの漢字をいろんな風に読めて混乱する、また文字自体を覚えるのが難しい
英語は:音の表記ですべてを現すため、フォニックスだけで数百種類あり(日本語は基本的に48)、抽象的な語彙もすべて音の違いで現す必要がある。

そして、アルファベットを使う言語では、他言語と単語の類似性が見られることも多くあります。

初めにも書きましたように、日本語ー英語 バイリンガルで、リミティッドバイリンガルの発生率は、7%くらいというデータがあります。

これには、上に述べたの要因が、様々な程度で複合していることが予想されます。


4つの問題が絡み合い、言葉や学習が遅れているという状況に、お手伝いが必要な時には、どうぞご連絡をください。現状をアセスメントし、出来ることを行っていく上での、助言を致します。









言語学・臨床心理学 修士
言語聴覚士・臨床心理士 清水宏美

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